JR北海道、全路線の半分1200kmが「維持困難」 赤字拡大は道庁のせい? 観光客頼みの苦しい経営

JR北海道が進める赤字路線の見直しで、「自社だけで存続できない」とする対象を、10路線13区間とする方針を同社が固め、18日に記者会見で発表しました。維持困難とされた路線区は現在のJR在来線路線の半分ほどにあたる約1200キロで、特に乗客の少ない3区間は廃止を前提に沿線自治体と協議するとのことです。

8区間は路線維持の費用について、沿線の自治体と協議しますが、地元の反発は必至です。

国鉄分割民営化で発足したJR「三島会社」のうちJR九州は株式上場を果たし(過去記事)、明暗が分かれた格好だ。

というわけで今回は、JR北海道の廃止路線・赤字路線をみていきつつ、なぜこんなに赤字が拡大してしまったのか、そして救う道は無いのかを考えていきます。

過去最悪の経常赤字235億円

jr%e5%8c%97%e6%b5%b7%e9%81%93

 

過去最悪の235億円の赤字決算になる見通しのJR北海道は、11月18日、「単独では維持困難な路線」として10路線13区間のリストを公表しました。営業距離にして1237.2キロ同社の全路線の約半分に相当します。

今年春、念願の北海道新幹線開業に漕ぎ着けたばかりのJR北海道に、いま何が起こっているのでしょう。

JR北海道は11月4日、2017年3月期の単独業績予想を大幅に下方修正し、経常損失を当初予想より60億円拡大し、発足以来最悪の235億円の赤字になるとの見通しを発表しました。台風被害の復旧費がかさんだほか、鉄道収入の減収が響いた結果です。収支改善策として子会社の株式売却などの合理化を進めましたが、資金繰りが一段と悪化するのは必至。その結果赤字路線の事業見直しが加速しました。

8月の台風で被害を受けた鉄道設備の復旧費を40億円、運休などによる減収分を40億円と見積もっており、災害復旧事業費補助金の適用額を制度上最大の2分の1の20億円と見込むものの、2017年3月期の純損失は当初予想より54億円膨らみ、98億円と見込んでいます。

全路線の半分、維持困難

%e5%8c%97%e6%b5%b7%e9%81%93%e5%bb%83%e6%ad%a2

廃止は4路線

1470966838

廃止を前提とするのは、札沼線・北海道医療大学―新十津川間(47.6km)、根室線の・富良野―新得間(81.7km)、留萌線・深川―留萌間(50.1km)の3路線3区間。廃線を前提に沿線自治体と協議する方向で検討中だということです。

いずれも1日1キロ当たりの利用者数を示す輸送密度が200人を割り込んでおり、バスへの転換を図る方向で検討しています。同じく輸送密度200人未満の石勝線・新夕張―夕張間(16.1km)は廃止が決まっています(過去記事)。

輸送密度2000人以下路線は上下分離方式へ

%e4%b8%8a%e4%b8%8b%e5%88%86%e9%9b%a2%e6%96%b9%e5%bc%8f

輸送密度が200人以上2000人未満の日高線・苫小牧―様似間宗谷線・名寄―稚内間根室線・釧路―根室間滝川―富良野間室蘭線・沼ノ端―岩見沢間釧網線・東釧路―網走間石北線・新旭川―網走間富良野線・富良野―旭川間計7路線9区間(計1041.7km)については、鉄道設備を自治体に所有してもらう「上下分離方式」を軸に、沿線自治体と協議を進める方針です。導入も含め、自治体の協力を求める考えだとしています。

根室線・帯広―釧路間宗谷線・旭川―名寄間2路線2区間(計204.5km)についても、将来的に地元などへの負担増を求める方針で、両区間は、列車の高速化事業などを行う第三セクターの北海道高速鉄道開発が線路の一部などを保有しており、同社には各沿線の帯広市、釧路市などの自治体も出資。JRは同社を通じて、維持管理費などの積み増しを求める見込みです。

いずれも2020年春までに合意を目指す考えだとしています。

函館本線は新幹線で第三セクター化

vol07_isaribi_logo

今後、12月に留萌線・留萌―増毛間が廃止されることが決定しています。

 北海道新幹線の札幌延伸に伴い、並行在来線となる函館本線・函館―小樽間(287.8km)も第三セクターへ経営分離される見通しです。

すでに五稜郭ー木古内を結ぶ旧JR江差線は、道南いさりび鉄道に経営分離されています。北海道においては、第三セクター方式で設立された第三セクター鉄道としては唯一の事業者ですが、今後は増えることになりそうです。

道内人口は減少続き

%e5%8c%97%e6%b5%b7%e9%81%93%e5%b8%82%e7%94%ba%e6%9d%91%e4%ba%ba%e5%8f%a3%e6%99%ae%e6%9f%a5-svg

JR北海道の島田修社長は18日の記者会見で「環境の変化に向き合わねばならない」と強調しました。道内人口は2015年までの25年で5%減り、とりわけ札幌市周辺以外の地域は17%減となっているのです。JR発足はわずか167kmだった道内の高規格道路は約1100kmに達し、自動車へのシフトが進んでいます。

17年3月期は18期連続の営業赤字となり、赤字幅は過去最大。9月末の手元資金は68億円と底をつく寸前で、このままでは安全対策や路線の維持費用を捻出できないのが現状で、資産売却などの合理化策を打ち出してきたが補えず、路線そのものにメスを入れることとなったのです。

また設備への投資が不十分で特急の脱線炎上事故などトラブルも相次ぎました。

島田社長は「このままだと19年度中に大変厳しい経営状況に陥る。この時期を念頭に合意形成を図りたい」と話しました。ただ、見直し対象路線の沿線自治体は56にのぼります。しかし自治体は大半が財政難で、バス転換や応分の負担を求められることに早速身構えています。通勤・通学など生活に果たす役割も大きく、協議は難航が予想されます。

一体なぜこうなったのか

道東にひろがる空白

%e5%8c%97%e6%b5%b7%e9%81%93%e6%ae%8b%e3%82%8a

上の図を見てください。JR北海道が単独で維持できるとする路線です。道東北に白い部分が目立ちます。

これに加え、北海道新幹線延伸で函館本線が廃止されるとすると、さらに減少します。

「経営安定基金」の低迷

138467329725851240225

まさに、JR北海道は経営危機の真っ只中にあります。今年の前期決算で鉄道事業から生じる営業損失は482億円となった一方、鉄道事業の営業損失を補てんする目的で国鉄民営化時に設定された経営安定基金からの運用益は349億円に過ぎず、会社全体の経常損失は22億2400万円に達したのです。

国が支援装置を講じた設備投資助成金の72億円を特別利益として計上した結果、55億8100万円の当期純利益が生じています。しかし、JR北海道の経営陣にとって、苦しいだけです。2020年度まで実施される国の支援措置は総額1800億円に上る予定ですが、そのうち900億円は無利子ながらも返済しなければならないからだ。

返済条件は10年据え置いた後、10年間で均等に返済していくという内容で、要するにJR北海道は2030年度以降の10年間、少なくとも90億円の経常利益を確保するか、または資産を取り崩すほか選択肢はないということ。後者の資産取り崩しは最終手段であり、存続のためには年間90億円以上の経常利益が必須となるのです。

営業費用は削りきった

実はJR北海道の営業費用は、ほぼ限界まで削減し尽くされています。データが確定している2013年度で比較してみます。

2013年、JR北海道の営業費用は1159億5968万円でした。営業キロは2499kmなので、営業キロ1km当たりの営業費用は4万6388円ということになります。

これに対してJR東日本・JR東海・JR西日本のJR本州3社は合計で営業費用が3兆1226億7427万円。3社合計の営業キロが合計1万4499.1kmなので、営業キロ1km当たりの営業費用は21万5370円です。JR北海道の営業キロ1km当たりの営業費用は、JR本州3社と比べると5分の1に過ぎないのです。

無理をすれば、さらに減らすこともできるでしょうが、冬は積雪に悩まされる北海道。軌道の保守は必要最小限になるため、安全のためには列車の速度を落とさなくてはならないだろうし、路線によっては雪が降っても除雪ができず、冬季運休も検討せざるを得ない状況です。

もちろん、18日に会社側が発表したように、利用者が少ない区間の営業廃止や上下分離はきわめて有効です。とはいえ、沿線自治体からの反対にも直面することは明らかです。

道庁は何もしない

1561-01

緊急事態にもかかわらず、地元の動きは鈍いんです。11月頭、JR線の将来について協議する「地域公共交通検討会議」の第4回目が開かれましが、いまだに議論の方向性を検討している段階。この十数年、道庁は北海道新幹線や高速道路の整備にばかり懸命で、在来線の存続について何も考えてこなかったんです。

なぜ、北海道や沿線自治体は、JR北海道がSOSを出すまで何もしてこなかったのか

JR北海道のローカル線の存廃が話題になったのは2年前ですが、きっかけは2011年5月の石勝線特急の脱線事故です。トンネル内で火災が発生した後の避難に手間取り、79名が負傷する惨事に。

これ以降、石勝線や江差線、函館本線で貨物列車の脱線事故が相次ぎ、特急気動車の出火事故まで起きました。レールや車両、設備のメンテナンスの不具合が指摘され、データの改ざんも発覚しました。

国土交通省は、持続困難な鉄道事業に補助を出す前提として、自治体が主導して事業に取り組むこと、そして地元が鉄道存続のために応分の負担をすることも求めています。

すなわち、沿線の市町村が補助を出すのかどうかで、存廃の判断をせねばならないのです。

すべてのローカル線を残すことは無理かもしれません。でも、持続させるべき区間もあるはずです。地元を調整しながら、取捨選択をする作業を担うのは北海道庁しかありえない

「JR北海道のローカル線が消えるかもしれない」と道民たちが不安に思い始めた今夏、北海道は新しい地域交通の活性化策をスタート。JR九州の「ななつ星」のような観光列車を走らせ、交通ネットワークを充実させると共に地域活性化に繋げたいという計画です。

いや、そこじゃない。

JR北海道では国鉄車両の老朽化が深刻な問題です。新車を投入するための資金を捻出できず、ローカル線の普通列車を大幅に減らしてきました。来春には特急列車の区間短縮も予定されています。現状を理解しているなら、製造費30億円の豪華列車が欲しいという話にはならないはず。

JR北海道は本当に何もしてないのか

発足から30年弱、ローカル線存続のため運転本数を減らすことをせず、値上げもほとんどしていません。留萌本線や釧網本線でSL列車や「ノロッコ号」など観光列車を走らせ利用者を増やそうとしてきました。

道民の期待に応えて、函館本線や根室本線などの高速化、札沼線電化、そして北海道新幹線にも重点投資をし、少しでも赤字額を減らそうとしてきました。

しかしわずかでも努力を重ねるJRに対し、道庁や沿線自治体は何もしていないのです。

道内では、国の全面的なバックアップを期待する声が根強いようです。国交省に陳情する自治体も現れたほど。北海道運輸局長は、今年8月の地域公共交通検討会議で、国への安易な支援要望に釘を刺しました。北海道の特殊事情を主張するなら、地元がどのような努力をするのか他地域の国民へ提案する必要がある、と指摘しています。ごもっとも。

今後、国は北海道の公共交通機関を維持するためにどのような支援プログラムを構築するつもりなのか。道や地元は当事者意識を持って参加するつもりがあるのか。JRだけでなく、自治体の動向もきちんと検証していく必要があるでしょう。

おわりに

長々とJR北海道問題について見てきましたが、実は悪いのはJRではなく自治体だった、ということはわかっていただけましたでしょうか。

これからは上下分離を含め、JR北海道の経営分割や、自治体による半官営など、検討すべきことはたくさんあります。

当ブログでもこれからも注目し続けていきたいと思います。

mamesuke

福岡出身、関西で学ぶ大学生。学生メディアとして、大学新聞で活動中。ガジェット好き、旅行好き、カメラ好き。鉄道もちょっとかじってます。

あわせて読みたい