カジノ実施法が成立:統合型リゾート(IR)はどこで実現?全国3か所に整備、4道府県が名乗り

「統合型リゾート(IR)実施法」(通称、カジノ法案)は7月20日の参議院本会議で、自民公明の与党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立しました。

2016年に当ブログでも、カジノ推進法案が衆院で可決されたとお伝えしましたが、当初の予定通り、1年間でギャンブル依存症対策を検討する関係閣僚会議を開催し、本格的な法整備の検討を行い、運営ルール等の策定を行い、今回実施法案が成立しました。

決定によれば、IRの施設数は当面、全国3カ所までとされ、この誘致へ向けすでに4道府県が名乗りを上げました。果たして、どこが最初に実現することになるのか、見ていきたいと思います。

カジノは統合型リゾート総面積の3%以下

まず、多く誤解されていることですが、今回成立した「統合型リゾート(IR)実施法」は、決してカジノだけを整備するという法律ではありません

カジノ法案」という名前のせいで誤解されますが、この法律は「統合型リゾート(IR)」を整備し、建設需要や雇用創出、観光客増加、カジノ収益による財政改善をしようというもの。その経済効果は1か所で約6000億円にものぼり、ほかの地域にも波及するとみられ、多くの自治体が誘致を表明していました。

そしてその統合型リゾート(IR)の中にカジノを設置することで、訪日観光客を呼び込み、観光先進国として世界にアピールしよう、というもの。カジノの面積はIRの総面積の3%以下となります。

IR施設はカジノのほか、ホテルなどの宿泊施設国際会議場・展示場などMICE施設テーマパーク商業施設ブランド店レストランフードコート劇場・映画館プール・スポーツ施設などを一体的に整備した巨大なリゾート施設。外国人観光客を増やす目的で、20世紀末からシンガポール、韓国、オーストラリア、マカオなどを中心に世界的に設立ラッシュが続き、外国人観光客の誘致に一定の成果をあげています。

日本では当面、IR施設は全国3か所まで設置され、設置数は最初の区域認定から7年後に見直せるようにします。すでに複数の地方自治体が誘致を表明しており、将来は施設数が増える見通しです。カジノを設置するには立地する自治体の同意を得ることも条件としました。

日本人は1日6000円、入場は週3回・月10回まで

カジノへの入場者は主に外国人旅行客を想定しています。

懸念されている「ギャンブル依存症」への対策として、日本人や在日外国人の入場回数はマイナンバーカードで管理日本人客の入場回数は週3日、月10日までに限るほか、1日あたり6000円の入場料を取ります。また20歳未満の人や暴力団員などはカジノへの入場を禁止します。ギャンブル依存症患者は家族の申請で入場制限を行うことも予定されています。

カジノ事業者は、収益の30%を納付金として国と立地自治体へ納めます。納付金は国と施設がある都道府県で折半して、観光振興や福祉などの公益事業に充てる計画です。IR全体では最大で約3兆円の利益を生み出すと試算され、長年のデフレに苦しむ日本経済にとって救世主となる可能性があります。

今後、融資制度の詳細など300以上の項目は、国会審議を経ずに変えられる政省令で決めます。今後は規制が段階的に緩和される可能性があります。

すでに4道府県が名乗り

上の地図を見てみてください。実はこんなに構想自治体があります。

以前の記事でもお伝えした通り、以前は東京・台場や横浜、沖縄が有力とみられていましたが、様々ないきさつで誘致レースからは後退。

現時点では北海道大阪和歌山長崎の4道府県がIRの誘致に必要な区域整備計画を国に申請する方針です。

これらの候補地について詳しく見ていきます。

北海道

北海道内で名乗りを挙げる候補地は、苫小牧市、留寿都村(ルスツ)、釧路市の3候補地。道は有識者会議を設置し、候補地の一本化を含む具体的な議論を始めています。

IRはカジノだけでなくホテルや会議場など様々な集客施設を設けられるため、複数の面で効果が期待できます。例えば、北海道は冬景色やスキーを求めて訪れる観光客が多い土地。とくに訪日客など季節変動の激しい観光客を常時呼び込むことができます。既存の観光資源と組み合わせれば、地域の活性化につながり、人口減少や雇用減少の激しい北海道で、新たな雇用が生まれる場にもなります。

道内3候補地では現状、苫小牧が有力です。道は5月に、候補地それぞれにIR施設を設けた場合の年間売上高や来場者数を試算。いずれも苫小牧が最も高く、売上高は最大1561億円、来場者数は同868万人でした。

苫小牧は6月、誘致に向けた「苫小牧国際リゾート構想」を公表しました。開発候補地を新千歳空港からアクセスしやすい同市植苗地区に選定。最短で24年の開業を想定し、1.5万平方メートル以内のカジノを中心に5000人を収容できる国際会議場のほか、2000室の宿泊施設などを整備する計画です。海外の事業者も、国際空港である新千歳にもっとも近い苫小牧市に関心を寄せています。

大阪・夢洲

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当ブログでも以前紹介した夢洲。大阪府と大阪市は、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)への設置を想定しています。

以前、大阪万博2025年誘致へ、という記事を書きましたが、大阪は「夢洲」に万博と統合型リゾートをセットで呼び込もうとしています

府の万博基本構想案では市内中心部と結ぶ地下鉄やJR線の延伸など関連事業費に700億円以上を見込みます。万博とIRをセットで呼び込んで周辺インフラを整備し、ベイエリアの活性化をもくろみます。つまり万博とカジノを夢洲で二兎を追う形です。

計画地の敷地面積は約70ヘクタールに上り、現状では国内最大級の施設が予想されます。大阪府の松井一郎知事は7月19日の記者会見で、IRの設計と工事を含めた期間を4年半と試算していると明らかにしましたが、万博の開催に間に合わせるためには、来年には施設の設計作業を始める必要があるという緊迫したスケジュールで、部分開業なども視野に関係各所と水面下で駆け引きを行っています。

さらにアメリカ・ラスベガスのカジノ大手、サンズのCEO/COOのロバート・G・ゴールドスティーン氏は「大阪は素晴らしい街。統合型リゾート(IR)の誘致に大きな可能性がある。我々の事業モデルはラスベガスやシンガポールのように人口が多く国際空港がある大都市型。その意味で大阪はぴったり」と関心を示します。また同じくアメリカのカジノ運営大手、MGMリゾーツ・インターナショナル大阪でIRの運営に大きな関心を示し、5000室を完備する2つの大型ホテルや、2万席を有するエンターテインメント・アリーナなどを含むプランを関係者に提示しているなど、いまや一番手ではと目されています。

万博誘致が成功すれば、万博とIRの建設で鉄道などベイエリアのインフラ整備が大幅にすすみ、現在関西空港から「京都への通過場所」になっている大阪に大きな観光資源ができることになります。

詳しくは過去記事をご覧ください。

和歌山

なぜ、和歌山なのか。神戸や京都といった観光地を抱える関西地方のなかで、全国的に見れば和歌山は地味な存在と思われるかもしれないませんが、和歌山は関西空港からの便も悪くなく、南紀白浜のようなリゾートもあります。

昨今は訪日外国人観光客も増加しており、特に熊野古道は根強い人気を誇っています。それだけに行政関係者たちから、和歌山は訪日外国人観光客を呼べる観光地の優等生とも称されるほど。「カジノを和歌山へ」は、決してあり得ない話ではないのです。

カジノが和歌山に決まったら、距離的に近い大阪にカジノは難しくなり大阪を脅かす大きな存在になっているのは間違いありません。

和歌山県の仁坂吉伸知事は7月20日「IRの雇用創出、人口減少抑制の効果は大変有益。鋭意整備計画の作成に努力したい」と歓迎する意向を表明しています。

誘致を目指す和歌山マリーナシティは、すでに「ボルトヨーロッパ」というテーマパークやホテルなどがある観光地です。約20ヘクタールの候補地は整地造成済みなので、すぐに着工できるのが強み。高野山、熊野古道といった観光地との連携も期待できるとみています。

和歌山県は年約400万人を来場を想定。このうち車での来場は300万人超で、最寄りの鉄道駅3駅とつなぐバスの増便が必要と見ています。また関西国際空港からの高速船を就航させるという計画もあります。

県は現在、IR事業のアイデアを民間から8月末まで募集しており、既に複数の応募があるといいます。

長崎

長崎県がIR誘致候補として掲げるのは、HISが経営に参画し、超V字回復を実現して、一大観光地として名を挙げる長崎県佐世保市のハウステンボス。ホテルやレストラン、劇場などと組み合わせた統合型リゾートとして官民でつくる研究会が2007年から誘致活動を進めています。

ハウステンボス内には“模擬カジノ”施設もあり、既にカジノ合法化をにらんで運営のノウハウを蓄積するため、2012年から公海上でカジノの営業を始めています。

5月に発表した誘致計画によれば、世界初となる海中にカジノ施設を建設することが柱です。海中カジノは海面下の壁を大型の強化ガラスにした特別施設で、海中を泳ぐ魚の様子などを眺めながらゲームを楽しむことができます。建設場所はハウステンボスが面している大村湾内を想定しており、建設コストは数百億円を見込みます。

国際会議場やショッピングモールなどIRを構成する他の施設は現在、駐車場として使っている敷地に整備。またIRの運営に関してはノウハウがないため、海外の大手企業と共同事業で行うことも検討していく方針だといいます。

おわりに

というわけで、IR実施法と、有力候補地についてみてきましたがいかがだったでしょうか。

IRの設置は、確実に雇用を生み出し、確実に客を呼び込み、確実に国や自治体の収入源となります。

たしかに、法成立のタイミングは西日本豪雨の後とあって批判もありますが、IR法成立は昨年の推進法成立時から既定路線です。個人的には「今法成立すべきじゃない!復興を!」と国会で議論してる間が無駄だと思っています。その時間に災害対応の会議を行えたかもしれない。今は復興よりも先に行方不明者の捜索と避難所の環境整備が優先で、こちらは数万人体制の捜索と、関係省庁や自治体による急ピッチの対応が行われています。激甚災害への指定も24日にされる見通しで、通常1~2ヶ月かかる激甚災害指定のための復興費用査定をわずか2~3週間で行っているのはとても速いスピードです。(そして万博前に開業したい大阪は、これでも緊迫したスケジュールのようで。)

ともあれこれで早ければ2023年・24年には、日本に巨大な統合型リゾートとカジノが誕生することになりそうです。

mamesuke

福岡出身、関西で学ぶ大学生。学生メディアとして、大学新聞で活動中。ガジェット好き、旅行好き、カメラ好き。鉄道もちょっとかじってます。

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