長崎新幹線、フリーゲージトレインでの整備を正式断念 フル規格かミニ新幹線で整備へ

九州新幹線長崎ルート(西九州ルート)の与党検討委員会は7月19日、7月中に結論を出すとしていた新鳥栖-武雄温泉間の整備方式について結論を先送りし、今後は全線フル規格かミニ新幹線の二択で検討を進める「中間取りまとめ」を決定しました。

開発中のフリーゲージトレイン(FGT)の導入については正式に断念しました。

九州新幹線(西九州ルート) – 鉄道建設・運輸施設整備支援機構

九州新幹線長崎ルート(西九州ルート)、いわゆる「長崎新幹線」。

2018年3月に、フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)か、一般の新幹線と同様のフル規格、既存の在来線を活用するミニ新幹線(山形新幹線などと同じ)の3方式について国土交通省から評価・試算が示されたことを受け、与党の検討委員会は、佐賀県、長崎県、JR九州などの意見を踏まえながら、長崎新幹線の整備について協議を進めてきました。

現在、新鳥栖~長崎間のうち武雄温泉~長崎間はフル規格新幹線で建設中

しかしフリーゲージトレインの開発が難航していることから、2022年度には、武雄温泉駅で在来線の列車から長崎行きの新幹線に乗り継いでもらう対面乗り換えの形、いわゆる「リレー方式」で暫定開業する計画です。

フリーゲージトレイン(軌間可変電車:FGT)は、車軸に取り付けられた車輪を左右にスライドさせることで、2本のレール幅(軌間)が異なる路線でも直通運転できる車両のことです。現在は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)の主導で開発を行っています。

長崎新幹線ではもともと、在来線(長崎本線など)と長崎新幹線(武雄温泉~長崎)の両方に乗り入れて博多~長崎間を直通する特急の運転が考えられてきました。

しかし、FGTの試験車両は高速域での走行試験で車軸に傷がつくなどのトラブルが発生し、開発が大幅に遅延。車両の製造コストや維持コストも高くなると見られ、導入自体が難しくなってきていました。

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検討委は、長崎新幹線は新大阪へ直通運転することが前提で、武雄温泉の対面乗り換え恒久化は全国につながる高速鉄道ネットワークの形成を妨げることとなり、あってはならないこととしました。その上で、FGTで整備した場合、最高速度は270km/hにとどまり、高速化の進む山陽新幹線への乗り入れが困難であることから、新大阪までの直通を前提とする長崎新幹線への導入は断念せざるを得ないと表明しました。

全線フル規格での整備に関しては、時間短縮と収支改善の効果が大きい一方、建設費も大きく、並行在来線に課題があるとし、ミニ新幹線に対しては建設費が小さい一方、時間短縮効果は限定的で、工事中や開業後の在来線の運行に影響が生じる恐れがあると指摘。

フル規格やミニ新幹線は、新大阪まで直通可能であるものの前述のような課題もあるとされ、直通するためにはこれら2つの整備方式の得失を総合的に検討したうえで、いずれかを選択する必要があるとしています。

課題はもう一つあります。

佐賀県は、全線フル規格かミニ新幹線かという方式論にかかわらず、追加負担は受け入れられないとする立場を表明しており、協議は難航が予想されます。

検討委員会はJR九州と長崎県との間で、佐賀県の追加負担の軽減策に関して協議を進めています。しかし、ミニ新幹線やフル規格での整備となれば、県内を横断するように走ることになる長崎新幹線への佐賀県の工事費負担は避けられません。検討委員会はどれだけ佐賀県の負担を軽減できるか、両者で細かく詰めていくことになります。

長崎新幹線のリレー方式による暫定開業は4年後の2022年

終点となる長崎駅では、新幹線の開業へ向け、駅舎を移設して新たな駅舎を建設する工事が行われています。

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「新幹線」の開業は、地域振興に確実に貢献する大きな力となることはこれまでの事例で実証済み。ふるくから「西の玄関口」として栄えた港町・長崎。クルーズ船も多く来航し、訪日観光客が長崎新幹線を多く利用することは確実です。いち早く整備方式を選び、暫定開業ではなくフル開業してほしいものです。

mamesuke

福岡出身、関西で学ぶ大学生。学生メディアとして、大学新聞で活動中。ガジェット好き、旅行好き、カメラ好き。鉄道もちょっとかじってます。

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