JR九州「ななつ星in九州」は運行開始から3年半でも予約倍率20倍超の圧倒的人気 豪華クルーズトレイン新時代#3

2013年10月15日に運行を開始したJR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」

高額な乗車料金にもかかわらず、予約平均倍率は20倍超の人気ぶりを継続。上場したJR九州の知名度向上にも大きく貢献しました。

ななつ星in九州 公式サイト

連載1回目、2回目で今年参入するJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」とJR東日本の「トランスイート四季島」。日本の豪華クルーズトレインの先駆者「ななつ星」は、その知名度と魅力的な旅で圧倒的人気を誇っていますが、JR東西の参入で三つ巴の戦いの様相を呈しそう、というわけで全4回に渡って「豪華クルーズトレイン新時代」と題し、世界的に大人気となっている日本の豪華クルーズトレインについて取り上げております。連載記事は下のリンクから。

【豪華クルーズトレイン新時代】の連載記事

それではななつ星について見ていきましょう!

新たな人生にめぐり逢う、旅。

ななつ星の現在のコースは2つ。

4日間かけて九州を周遊する3泊4日コースと、九州の北部を周遊する1泊2日コースの2つです。

熊本地震の影響で豊肥本線が運休している影響で、どちらのコースも運行開始時とは大きくコースが異なります。また半年ごとに細かにコースを変更しています。もしかしたら「リピーター」も狙ってるのかもしれませんね。

ここでは2017年3月~9月出発分(第10期)、2017年10月~2018年2月出発分(第11期)を例に紹介したいと思います。

3泊4日コースでは福岡・大分・宮崎・鹿児島・熊本の5県を巡ります。ゆふいんなどの人気エリアの散策や、海と空が広がる南国風景、東シナ海に沈む夕日、世界的にも珍しい阿蘇の絶景、霧島温泉での宿泊など、自然ゆたかな九州の魅力を凝縮した内容。

1泊2日コースは福岡・佐賀・長崎・熊本・大分の5県を巡る九州北部を周遊するコースです。1日目のメインは、400年の歴史を伝えるやきものの町、有田の窯元訪問。2日目には、ゆふいんの町並みを散策し、オプションとして長崎夜景ツアーや豊後森散策もあります。

旅行価格は1泊2日で300,000円~、3泊4日で630,000円~。最低額が1泊2日コースの「スイート」で30万円、2人1室利用時の最高額が3泊4日コースの「DXスイートA」で95万円、1人1室利用では「DXスイートA」で最高155万円の価格設定があります。

ちなみに3泊4日コースのDXスイートAは、現在でも予約倍率97倍と圧倒的人気です。(運行開始時の倍率は、なんと268倍)

実はこの高額な価格、もう5度目の値上げ。登場した当時、高い!と話題になった最高価格は55万円でしたが、いまでは7割も跳ね上がった計算。体験コース充実を理由としていて、より顧客のニーズに合わせて選択肢は拡大しています。

一方でJR九州にとっては、ななつ星の運行は赤字事業。1回の定員が30名のため、年間100回運行しても売上は5億円程度。車両の製造に50億円、さらに人件費もかかっているため、いまやJR九州の経営の核になりえません。それでも運行をする理由は…後ほど。

最上級の「和み」の空間

「ななつ星in九州」は木やファブリックを様々にあしらい、デザイナー・水戸岡鋭治氏がデザインした、和洋・新旧融合の国内最上級の洗練された空間です。ラウンジカーにはバーカウンターを備え、ピアノの生演奏をききながらくつろげるソファや回転椅子などを配し、展望用に窓を大きく配します。1両を2室にした「DXスイート」、3室にした「スイート」のゆったりとした客室など、今までにない新しい列車の旅を提案しています。

車両は全10両。1号車はラウンジカー「ブルームーン」、2号車は食堂車(ダイニングカー)「木星」、3~6号車が「スイート」の客室が1両に3部屋ずつ、7号車は「DXスイート」2部屋あります。

1号車のラウンジカー「ブルームーン」は、昼は休息場に。夜はバーがオープンします。和モダンなデザインで、ピアノの生演奏なども行われるおしゃれな空間です。パノラマ車窓からは星空がのぞきます。

2号車のダイニングカー「木星」では、山と海に囲まれた九州の四季折々の旬の食材を堪能でき、九州を代表する料理店のシェフが自慢の腕をふるいます。

そして14のゲストルームのうち、12室あるスイートは和と洋、新と旧の融合をデザインテーマとした空間。ふんだんにあしらわれた木やファブリックの数々は、その一つひとつが選び抜かれた逸品です。もちろん各部屋に、シャワー・トイレ・空調を完備。列車ならではの機能に徹底してこだわっています。

DXスイート(702号室、Bタイプ)

DXスイート(701号室、Aタイプ)

7号車に設置された2部屋しかない、特別なデラックススイートは、AとBの2タイプ。タイプの異なる部屋ですが、広々とした空間に和を感じる家具や調度品を揃えます。最後尾のAタイプの部屋では、車両最後尾が一面窓。最高の景色をまさに独り占めできます。

「九州」の魅力を引き出すリゾート化

JR九州の観光列車「A列車で行こう」

九州は現在、人気観光列車の宝庫ともいうべきエリアです。九州新幹線の開業にともなって、JR九州は観光を目的とするリゾート列車を積極的に導入し、沿線各地と協力して、観光客の誘致・もてなしをしようと努めてきました。こうした努力は着実に実を結び、「ななつ星in九州」の成功にも繋がることとなりました。

JR九州によると、ななつ星の乗客の平均年齢は64.4歳。旅に関心があり、お金に余裕のあるシニア層が多く利用していることがわかります。また、乗客に占める外国人の割合は約20%に上り、外国人の人気もつかんでいるのです。

まさにターゲットとしていた層ががっちりと利用しています。

アジアの玄関口としての九州、そして日本のリゾートそしての九州は大きく地位を高めて、JR九州の思惑通り、といったところです。

九州観光の顔、阿蘇山

先程、後ほどと言った「JR九州が赤字のななつ星を運行する理由」。それは、「ななつ星in九州」そのものを観光資源として、観光客を九州へ誘致する広告塔のような働きを持たせることができるからです。

一番高額なクルーズトレインには乗れないけれど、「かわせみやませみ」「あそぼーい!」「海幸山幸」「指宿のたまて箱」「A列車で行こう」「ゆふいんの森」「或る列車」といった観光列車には手を出せる。さらには「観光列車で人気だし、九州は観光資源がいっぱいだから旅行したい」と思わせることができるわけです。

JR九州が先駆者となった豪華観光列車は、「ななつ星」そのものの成功だけでなく、九州全体の魅力向上、果てはJR九州のブランド力を高める結果となりました。

日本初のクルーズとしてだけでなく、鉄道にも観光にも様々な影響を与えている「ななつ星 in 九州」。クルーズトレインとしてだけでなく、日本における観光そのものにも風穴を開け、結果、JR東日本とJR西日本が追随することになりました。

果たして今後、三つ巴の戦いはどうなるのか、それは連載最終回で!

【つづく】

mamesuke

福岡出身、関西で学ぶ大学生。学生メディアとして、大学新聞で活動中。ガジェット好き、旅行好き、カメラ好き。鉄道もちょっとかじってます。

あわせて読みたい