津軽海峡に「第2青函トンネル」建設構想 貨物専用線で北海道新幹線高速化へ

元旦の北海道新聞に、こんな記事が掲載されました。

青函に「第2トンネル」専門家ら構想 貨物線で新幹線高速化(北海道新聞 2017年1月1日付)

大手建設会社や土木の専門家などの検討会で、津軽海峡の海底下を通る「第2青函トンネル」の建設を目指し、案がまとめられました。北海道新聞の報道によると、既存の青函トンネルの100m~250m西側に平行するルートで、57kmの単線、工費3900億円、工期15年という構想です。

え、なんでもう一つ作る必要があるの?と最初思いましたが、報道内容や現在の青函トンネルの現状を見てみると必要な理由が分かってきました。

というわけで今回は、第2青函トンネル構想について見ていきたいと思います。

【追記:貨物と自動車用の2本を構想しているとの2月14日の報道を受け記事を更新しています。更新内容は一番下です】

「東京から4時間以内」を実現できなかったのは青函トンネルのせい?

2016年春に開業した北海道新幹線。

新青森から新函館北斗の間に奥津軽いまべつ・木古内の2駅が設置され、津軽海峡は青函トンネルを在来線と共用使用する、全長149kmの路線です。

北海道新幹線が構想された当初、東京~新函館北斗間の最速所要時間は「4時間以内」と見られていたため、飛行機利用との分岐点となる「4時間の壁」を破るかどうかに注目が集まっていました。しかし開業後、その所要時間は最速4時間2分。「最速」ですので、ほとんどの列車は4時間20~30分かかります。4時間を切れなかったことに落胆の声も大きく、実際、羽田空港から函館空港へは1時間20分で着くことができ、運賃も16000円台~で、新幹線の最安価格1万5040円とほぼ変わらないのです。

ではなぜ、4時間を切ることができなかったのか。

それは「青函トンネル内で最高速度を出せないため」です。

三線軌条となっている海峡線の新中小国信号場―木古内駅間の路線(Wikipediaより)

現在の青函トンネルでは、在来線(海峡線)を走る貨物列車との共用走行のため、最高時速が140km/hに制限されています。青函トンネルを含む新中小国信号場(青森県)と木古内駅(北海道)間の82.1km区間は三線軌条による在来線(海峡線)との共用区間であるため、すれ違う貨物列車のコンテナが風圧で破損する恐れがあるため、新幹線の最高速度を出すことができないのです。共用走行が解消されれば、新幹線は260km/hで青函トンネル内を通過することができます

さらに1988年に建設が完了した青函トンネルも、北海道新幹線が札幌へ延伸した10年後、2040年頃には開通から50年を迎え、大改修が必要になり、現在既に貨物・新幹線で過密な青函トンネル内のダイヤですが、それぞれ減速しながらの作業となってしまい、ただでさえ140km/h走行の新幹線がさらに遅くなってしまいます。

そこで考え出されたのが「第2青函トンネル」構想です。

「第2青函トンネル」はすべてを解決する

北海道新聞によると「第2青函トンネル」の概要は次の通りです。

鹿島建設や大成建設などの大手建設会社、民間コンサルタントらでつくる「鉄道路線強化検討会」が2年ほど前から、複数の案について経路や工費などを検討し、昨年夏にまとめた。構想によると、既存の青函トンネルの西側100~250メートルに、延長57・0キロの第2青函トンネルを設ける。貨物列車向けの単線で工費は約3900億円、工期は約15年とした。

2004年、国土交通省が「平成16年度の整備新幹線建設推進高度化等事業」における「青函トンネルにおいて貨物列車が新幹線上を走行する場合の安全性の検討などを行う」調査を実施し、それを受けて2012年7月には国土交通省内で「青函共用走行区間技術検討WG(ワーキンググループ)」も設置されました。

2014年7月9日付河北新報によれば、青森県議会議長が同年6月30日の定例記者会見にて、国土交通省事務次官に対し非公式ながら「もう1本掘ってください」と伝えていたことを明らかにしています。

そして2015年ごろから、鹿島建設や大成建設などの大手建設会社や大手コンサルタント会社により「鉄道路線強化検討会」が発足。2016年、青函トンネルの西側に、貨物専用の第2青函トンネルを建設する構想を取りまとめています。

技術革新で工費削減・工期短縮

当初、国土交通省の試算では、第2青函トンネルの工費として、複線で約5,800億円、単線で約5,000億円とされていました。

しかし鉄道路線強化検討会は「単線で約3,900億円」という数字を出しました。国交省の見積もりよりも約1,000億円以上も圧縮されています。

これを実現するのは、海底の下にトンネルを掘る方法ではなく、沈埋工法という新しい工法です。沈埋工法とは、トンネルをあらかじめ地上で作り、海底に掘った溝に置いてつなぎ、最後に水を抜く方法です。首都高速羽田トンネルでも採用されていますし、大成建設がトルコ・イスタンブールのボスポラス海峡海底トンネルでも採用し、水深60mの沈埋トンネル設置で世界最深記録を作りました。現・青函トンネルの工事は、海底部地下の地質がもろく、出水に悩まされました。沈埋工法はその区間を掘らずトンネルを載せるだけなのです。

陸の部分はシールド工法で穴を堀り、海底部分は沈埋工法でトンネルを沈める。これなら国交省の試算より安く早くもう1つのトンネルを掘ることができるのです。

なぜもう1つ必要か

本州側から見た青函トンネルの入口

なぜ「第2青函トンネル」が必要なのか。

まず1つは先程も紹介したように新幹線と貨物がトンネルを共用していては、今後札幌まで延伸した場合でも新幹線が最高速度を出せず、航空機との競争に負けてしまい、新幹線建設の意味がなくなること。そのため構想されているのが新たに貨物(在来線)専用のトンネル新設です。貨物列車を新トンネルにすべて振り分ければ、新幹線はすれ違いを考えることなく青函トンネルを通過できるのです。共用走行が解消されれば260km/hまで高速化でき、より多くの本数を運行できることになりますから、観光などの面で高い効果が期待できます。

2つめが、札幌延伸の10年後に迎えることになる現・青函トンネルの大改修の際、運行速度を落としたり運行本数を減らすことなく運行するためです。間もなく大改修を迎えることになる、関門海峡のトンネルも、在来線・新幹線・国道の3本と高速道路の関門橋があり、大改修でどれかが一時不通になったとしても振替運行が可能です。しかし青函トンネルは津軽海峡フェリーのみ。在来線で運行、なんてことも共用トンネルなので不可能なのです。手っ取り早い解決方法として、もう1つのトンネルが必要ということでしょう。

3つめが、非常事態時の輸送力確保です。先月の豪雪で、新千歳空港や函館空港は大混乱。航空機の運休で、札幌~新函館北斗間の特急列車と北海道新幹線へ迂回する人で大混雑となりました。初めての冬で、早速北海道新幹線の有用性が実証されました。新千歳―羽田間の航空便は、国内線の中で不動の1位で、年間約900万人が利用しています。その航空便が不通となるような場合、振替輸送の役割をはたすのは新幹線です。また、貨物列車で青函トンネルを経由する北海道と本州間の輸送量は年間およそ450万トン。これは津軽海峡をフェリーで渡るトラックの輸送量に、ほぼ匹敵する数字です。荒れやすい津軽海峡の荒天時に物流が止まると、日本全体に影響が及んでしまいます。そして北海道と本州間の物流量は年々増加しています。貨物列車の増発にも青函トンネルは容量不足なのです。

おわりに

というわけで「第2青函トンネル」構想について見てきました。

このような大きな公共工事になると、「箱物行政だ」などの批判があがります。しかし第2青函トンネルは、増え続ける貨物の増発を可能にし、新幹線の高速化で観光客をより呼べるようになるという利点が明らかです。全く見切り発車ではないのです。

私は「第2青函トンネル」には賛成です。そしてぜひ、札幌延伸と同時に、第2青函トンネルも完成してほしい。そう思います。

全国で相次ぐ新幹線建設で、本当にメリットはあるのか、という声も聞こえますが、観光客は増え地域は活発化しています。もうメリットは明らかなのです。

そして新トンネルの建設は日本の優れた技術を世界にアピールするチャンスです。国家の威信をかけたプロジェクトとして、再び津軽海峡に挑んでほしいと思います。

(個人的には、ロシアのシベリア鉄道北海道延伸(過去記事)という話も、これで前進するのではと思っています)

追記:貨物と自動車用の2本を掘る新たなトンネル構想

2月14日、北海道新聞が、

青函に新たなトンネル構想 貨物と自動車用2本 経済団体発表(北海道新聞 2017年2月14日)

と報じました。

即出の記事では「貨物専用線」でしたが、建設会社や商社など200の企業・団体でつくる日本プロジェクト産業協議会が新たな第2青函トンネル構想を発表しました。

現在の青函トンネルを「北海道新幹線専用」にすることは一致していますが、こちらは貨物列車用と自動車用の2本のトンネルを新たに建設し、トンネル内に送電線やパイプラインを敷設することで、北海道の食料・エネルギー基地化につなげたいということです。

ですがこちらは、地上から海底に向かって掘る際の傾斜を急にして、距離を30kmに短縮し、事業費は約7500億円、工期は約20年間を想定しています。貨物単線で作るのに比べて約2倍の事業費とさらに5年の歳月がかかります

確かに自動車道を津軽海峡に通すのはロマンのある話ですが、事業費が2倍もかかるとなると…。送電線やパイプラインは確実に必要であるとは思いますが、現在も車で移動できる津軽海峡フェリーはあるわけですし、現実的では無いと思います。

いずれにせよ、第2青函トンネルに関しては賛成です。これには、変わりありません。

mamesuke

福岡出身、関西で学ぶ大学生。学生メディアとして、大学新聞で活動中。ガジェット好き、旅行好き、カメラ好き。鉄道もちょっとかじってます。

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