夕張市がJR北海道に「鉄道廃止」を提案 「維持困難路線」の選定に先手

 「16区間が維持困難」―。

JR北海道が今秋に向けて「鉄道維持困難路線」を選定する中、8月8日、夕張市が先手を打ちました。

市内唯一の鉄道路線「石勝線夕張支線」の廃止提案です。

 先月29日、JR北海道は記者会見を開いて「持続可能な交通体系のあり方について、地域の皆さまに早急にご相談を開始させていただきたい」と発表しています。同日、自社サイトに詳しい意見書とスライド原稿が掲載されました。

それによると、趣旨は「JR北海道が北海道における重要な基幹交通機関であり、地域の交通手段の重要性を認識した上で、経営状況の悪化と沿線の過疎化を踏まえて、今後の交通問題を沿線自治体に相談したい」ということです。

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1470965469 JR北海道は具体名を明らかにしていませんが、厳しい経営状況を踏まえて輸送密度2000人未満の線区を「JR単独では維持困難な線区」の対象にするとみられていて、この場合、宗谷線や根室線富良野―新得間など11路線16区間が該当します。

(図は北海道新聞社より)

 今秋までにJR北海道が「自社単独で維持できる線区」と「自社単独で維持できない線区」の振り分けを発表します。その上で、「自社単独で維持できない線区」の自治体に対して、上下分離やバス転換などを地域へ提案。「自社単独で維持できる線区」についても、JR北海道は駅や列車の削減や運賃値上げを実施する方針と発表しています。

JR北海道の過去の発表によると、黒字の路線は札幌近郊の限られた線区のみ。自社単独で維持できる線区は、条件付きで維持できる線区という意味で、もう少し範囲は広くなりそうですが、どちらにしてもJR北海道は「切り離し」を宣言したわけです。北海道の鉄道沿線自治体は「秋の決定」をハラハラしながら待っている状況。

「○○本線」ですら…。

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 そうした中、JR北海道の動向の先手を打って動いた自治体がありました。名寄市など宗谷本線の沿線20市町村で作る「宗谷本線活性化推進協議会」が北海道議会や国土交通省へ鉄道存続の要望書を提出していたのです。

宗谷本線は旭川と稚内を結ぶ幹線です。稚内駅は日本最北端の駅で、市の人口は約3.6万人。ロシアとの交流もあります。

宗谷本線は札幌発着の特急「スーパー宗谷」2往復、「サロベツ」1往復があり、道北のまさに背骨。実は昨年から普通列車の減便や特急列車の札幌乗り入れ廃止など合理化の方針で、沿線自治体の現状維持の要請に対して「資金不足」の一点張りが続いていたのです。

「○○本線」と名の付く幹線でさえこの状況。いまや札幌都市圏を除き、北海道で路線を有する自治体は皆、鉄道を失うという危機感を抱いているのです。

夕張市がJR北海道に石勝線支線廃止を提案

1470966838 8月8日、夕張市が「鉄道よりもバスの支援を」とJR北海道に提案しました。

そもそも、鉄道路線廃止と言えば自治体が反対するはず。夕張市の選択は報道でも「異例」と報じられていました。

夕張市が廃止を提案した線区はJR石勝線の支線、新夕張~夕張間16.1kmの区間。石勝線は、千歳線・南千歳駅と根室本線・新得駅を結ぶ約130kmの幹線。札幌と帯広、釧路を結ぶ特急列車のために作られました。しかし、支線の新夕張~夕張間は新夕張駅から分岐した路線。今となっては普通列車が1日5往復だけ走っています。とっくに廃止対象になっても良い線区だったと言えます。

 元々、夕張~新夕張~追分間は「夕張線」という路線名でした。建設目的は夕張炭鉱からの石炭輸送。室蘭本線を経由して室蘭港まで石炭を運んだのです。しかし、主要炭鉱の閉山によって、1978年に石炭輸送は終了。夕張線はローカル線になりました。

旧国鉄の赤字ローカル線廃止問題が議論されたころ、夕張線は対象になりませんでした。存廃の検討期間に石炭輸送が継続し活況だったからです。そして石炭輸送が終了しても廃止されなかった。一部区間を石勝線に転用する計画があったためです。石勝線は札幌と帯広、釧路を結ぶバイパスルートとして、1981年に開業した。そう、石勝線が後にできたのです。

このとき、取り残された新夕張~夕張間は独立した路線名にならず、石勝線の支線とされました。幹線特急が走る石勝線の輸送成績は良く、鉄道路線の存廃は路線単位で検討されたため、支線の成績も石勝線全体の成績の陰に隠れたというわけです。JR北海道になっても路線単位の成績管理では支線のみのリストアップされていないのです。

 こうして地元の輸送需要減少とは関係なく、新夕張~夕張間は残りました。乗客は存在するとはいえ、ほんのわずか。夕張市にとって、鉄道路線はとっくに役目を終えていたのです。なぜなら道路事情が改善されたからです。1965年に夕張トンネルが開通し、94年には道路再編成で道道3号線となり、2007年に新夕張トンネルに付け替えられました。一方、鉄道ルートは南に大きく迂回するルートのまま。鉄道は特急利用で約2時間、各駅停車で約2時間半、札幌~夕張間は路線バスで約1時間40分となっているのです。

夕張市は2019年度までに市内に拠点複合施設を作り、これを中心としたバス路線網を整備したいと考えています。そのため、JR北海道に対し、この交通体系への協力を引き替えに鉄道路線廃止に同意すると伝えました。進んで鉄道線路を差し出して、市内の交通体系整備に対する好条件を引き出そうと考えたのです。どうみても夕張市優位の取引です。

おわりに

 「地域が発展するためには鉄道は必要」「鉄道がなければ、地域は衰退する」―。

たしかにその通りかもしれません。

しかし、見方を変えれば、衰退しているから鉄道を維持できなくなった、鉄道があってもなくても衰退する運命にあった地域とは言えないでしょうか。

鉄道がなくても元気な都市もあります。沖縄がいい例です。

問題続きのJR北海道。もはや国営にした方がいいんじゃないかと思ってきますね。

mamesuke

福岡出身、関西で学ぶ大学生。学生メディアとして、大学新聞で活動中。ガジェット好き、旅行好き、カメラ好き。鉄道もちょっとかじってます。

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